調達パートナーとの対話
サプライチェーン サステナブル マネジメントの考え方・方針
国際社会において企業の社会的責任への関心が高まるなか、日立建機グループでは、調達パートナーを含めたサプライチェーン全体でのサステナビリティへの取り組みを推進しています。取り組みにあたっては、調達パートナーとサステナブルな意識を共有化し、サプライチェーン上のリスクを未然防止することが重要であると考えています。
日立建機グループは、2022年10月「日立建機グループ サステナブル調達ガイドライン(第1版)」を発行しました。これは、最新の国際基準および日立建機グループのサステナビリティへの取り組みを踏まえたものです。このガイドラインでは、日立建機の方針・考え方をお伝えするとともに、調達パートナーの皆さまに遵守いただきたい行動規範を示しています。また、「日立建機グループ グリーン調達ガイドライン(Ver.1.0)」も発行しています。行動規範に関する内容は「日立建機グループ サステナブル調達ガイドライン」に統合・一本化するとともに、具体的なグリーン調達の実施要領は「日立建機グループ グリーン調達ガイドライン(Ver.1.0)」に記載することで、調達パートナーの皆さまにより分かりやすく、取り組みや要請内容をお伝えすることを目的としています。
このガイドラインは、調達パートナーの皆さまに遵守していただくサステナブルな行動規範・基準として、調達パートナーの皆さまへ配布し、周知徹底を図っています。
また、調達部門では調達パートナーの選定の際に、資材の品質・信頼性・納期・価格、および取引先の経営の安定性・技術開発力等に加え、調達パートナーのサステナビリティへの取り組みに関する評価項目である、公正で透明性の高い情報開示、法令および社会的規範の遵守、人権の尊重、雇用と職業に関する不当な差別の撤廃、児童労働および強制労働の排除、環境保全活動、社会貢献活動、働きやすい職場作り、調達パートナーとの社会的責任意識の共有等の、社会的責任を果たしているかを総合評価することで、サステナブルな調達を実践しています。(「購買取引行動指針」に明記)
さらに新規調達パートナーに対しては、コンプライアンスの取り組み強化を目的に、社内審査の手続きを2017年11月に改訂し、贈収賄など、環境・社会基準も考慮した内容を含め、厳正な審査を行っています。
サプライチェーン サステナブル マネジメント体制
ビジネスがますますグローバルに進展する中、サプライチェーンにおける調達リスクが経営問題につながる可能性が増大しています。日立建機では、できる限り事前に当該リスクを把握し、軽減するよう努めるとともに、重要性の高い情報については取締役会などに共有しています。また、Chief Procurement Officer (CPO、最高調達責任者)を責任者とする調達に関するESGプログラムを実践することで、サプライチェーンサステナブルマネジメント体制を構築しています。
日立建機グループでは、地球環境に配慮した部品・製品の調達に関する基本的な考え方や、調達パートナーの皆さまへの要望事項を、他社に先駆けて1998年度に「グリーン調達ガイドライン」にまとめ、調達パートナーとともにグリーン調達を推進しています。「グリーン調達ガイドライン」では、調達パートナーの皆さまの環境保全活動に関する事項(環境経営体制の確立、認証規格の取得推奨等)や、日立建機への納入品について環境負荷低減に関する事項(省資源、省エネルギー、リサイクル、製品含有化学物質の適正管理、適切な情報提供等)を遵守するよう要請しています。
サプライチェーンサステナブル調査の実施
日立建機グループは毎年、当グループと直接取引のある調達パートナー(1次調達パートナー)のうち、取引量が大きく、当グループの製品の重要な部品・原料を提供する主な調達パートナーを、サプライチェーンに著しい影響を与える調達パートナーとして特定し、サステナブルな 調達を実践に移す第一歩として、2010年度より調達パートナーに対して「サプライチェーンCSR 調査」を実施しています。また、2022年のサステナブル調達ガイドラインの発行に伴い、新たにCSR調査シートを改定しました。
作成にあたり、参考にしたのが、JEITA(Japan Electronics and Information Technology Industry Association)のResponsible Corporate Behavior Guidelines Self-Assessment SheetとGCNJ(Global Compact Network Japan)のCSR調達セルフアセスメントツールです。これらの調査ツールは、2022年に改定しており、当社としては、時節にあったメソドロジーを取り入れることができました。その調査項目は、人権・労働、安全衛生、環境、公正取引・倫理、品質・安全性、情報セキュリティ、社会貢献の7分野に及びます。
2014年度から「サプライチェーンCSR 調査のグループ展開」に注力したことで、海外グループ会社である日立建機(中国)の調達パートナーに対してサステナブル調査を実施しています。
2023年度は、日立建機単独における購入高の約8割を占める調達パートナーに対してサステナブル調査を実施し、回収率は93%でした。評価結果が、当グループの設定する最低スコアに満たない調達パートナーを潜在的なサステナビリティに関するリスクが高い調達パートナーとして特定し、これらに対しては改善要請を実施し、継続的な改善への取り組みを行っています。(※)
今後も、日立建機(中国)を中心にサステナブル 監査を含めた調査を継続的に実施し、調達パートナーの皆さまとともに改善活動を進めてまいります。また、サプライチェーン全体のBCP(事業継続計画)の確立に向けた取り組みも推進してまいります。
※調達パートナーとの契約締結・更新に当たっては、「購買取引行動指針」に従って評価しています。
2023年度、サステナブル調査の結果、当グループが定める最低スコアに満たなかった調達パートナーの割合は0%でした。
紛争鉱物不使用についての対話
日立建機グループは、「日立建機グループの責任ある鉱物調達方針」に基づき、紛争鉱物の不使用について調達パートナーとの対話を行っています。
日立建機グループの紛争鉱物調達方針
日立建機グループは、紛争鉱物を含んだ部材を調達することによって同地域の武装集団の活動を助長することがないように責任ある調達活動に取り組んでいくことを方針として掲げています。また同時に「OECD 紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデューディリジェンスガイダンス」を尊重し、その内容に基づいてより詳細な調査にも取り組んでいます。
環境への取り組み:グリーン調達・購入
日立建機グループは、調達パートナーとともにサプライチェーン全体でCSR活動を推進していくため、主な調達パートナーのISO14001やエコステージなどの環境マネジメントシステムの認証取得率「グリーン調達パートナー率」100%を目標として、当グループのCSR調達推進のためのKPIとして設定しています。
2023年度の調達先の認証取得率を示す「グリーン調達パートナー率」は協力会社において100%となっております。また、環境規制への対応のため、JAPIAシート※の記入依頼と回収も継続的に行っています。2023年度も欧州化学品庁による第30次SVHC(Substances of Very High Concern:高懸念物質)公開に伴う調査を実施しました。2024年度も継続調査を実施し、引き続き定期的なフォローアップを行い、回収率向上を図っていきます。
今後も、引き続きJAPIAシートの調査依頼および回収に努めてまいります。
※ JAPIAシート:一般社団法人日本自動車工業会が定めた、製品・部品に含まれる化学物質の情報を収集するための業界統一データシート
環境への取り組み:温室効果ガス(GHG)排出量削減
日立建機グループは、調達パートナーの省エネ活動に対する評価・推進を実施し、サプライチェーン全体でのGHG(CO2)削減に努めています。
エネルギー使用が大きい調達パートナーに対して、生産工程でのエネルギー使用量や電力を可視化するシステムを導入し、月に1回アドバイスをしながら、生産効率ひいてはCO2削減に繋がる改善支援を行っています。また、省エネ施策を共有しています。
調達パートナーとのパートナーシップ「筑峰会」「ときわ会」「若葉会」
日立建機では、調達パートナーとのパートナーシップを構築・維持することを目的として、継続的な取引のある調達先に「筑峰会」(61社所属)、「ときわ会」(49社所属) のいずれかの会に所属していただいています。(2024年4月現在)
両会では、日立建機の方針の理解や安全・品質・環境などに関連するさまざまな取り組みを進めるために合同講演会、合同発表会、合理化事例発表会、技能競技会、会員相互の安全巡視などを行っています。また、これらの調達先も含め、定期的に調達先説明会を開き各調達先でのCSR活動推進を要請しています。
2020年6月より 調達パートナーのさらなる経営基盤強化を目的とし、調達パートナー各社における次世代の経営を担う幹部候補で構成する「若葉会」を発足しました。調達パートナー各社のモノづくり技術は、日立建機グループの生産の基盤であり、サステナブル経営の観点からも、調達パートナーの事業継続ならびに経営基盤の強化への支援は必要不可欠なものとなっています。この若葉会においては独立行政法人中小企業基盤整備機構と連携し、調達パートナーのさらなる経営基盤強化に向けた教育支援プログラムを実施しています。
若葉会の活動では、調達パートナーのレベルアップを目的に、中小企業の経営層を主な対象として、外部講師による教育支援を実施しています。具体的には、経営幹部に必要なノウハウ、マインドセット、マネジメントスキルの習得や、経営者と幹部候補の方に分かれて、それぞれが自社の課題解決を立案する研修を行いました。2020年10月からスタートした第一期は22社から22名、2022年10月からの第二期は15社から16名、2023年10月からの第三期は15社から15名の参加がありました。2024年10月から第四期の研修を実施する予定です。
安全・環境巡視
2023年6月から11月までを巡視期間として、ときわ会49社の全てに訪問巡視を実施しました。また、各社には事故事例集を送付することで、再発防止に努めています。
調達パートナーへの支援
日立建機では調達パートナーに対して、さまざまな面から支援活動を行っています。2023年度は、調達パートナーのロスコスト(本来必要なかったはずのコスト)削減の推進を目的として「品質を確保する、納期遅延を無くす、適正なコストでの購入を可能にする」ための支援を実施しました。具体的には、品質・納期対策に伴うコスト変動の精査、納期遅延対策のための「ときわ会ITシステム」支援体制の構築、発注から納入までの課題抽出・解決などです。また、IoTを活用した改善効率化支援や、教育支援などを実施しています。
※調達パートナー:日立建機では調達先を「対等な立場で一緒にビジネスをつくり上げるパートナー」に位置づけており、通常は「調達パートナー」と表現しています。本文中においては、社外の方における検索性を鑑み、「調達パートナー」と表記しています。
調達パートナーに対する評価
日立建機では調達パートナーに対して、リスクマネジメントとエンゲージメントを目的として、取り組み状況の評価を行っています。
・スコアリング評価
日立建機では年1回、購入高累計80%以上の調達パートナーについて、SQDC(安全・品質・納期・コスト)、経営状況、CSR遵守状況等を点数化し、優良な結果が出たパートナーを表彰しています。スコアリング評価基準を設け、当社のデータベースや調達パートナーからのアンケート(サプライチェーンサステナブル調査)などから得た情報を評価基準と照合し、点数付けをして表彰する調達パートナーを選定しています。また、点数付けをした内容を基に、それぞれの項目を見える化し、各社へフィードバックしています。
・経営状況評価
調達パートナーの決算内容についてヒアリングを行い、評価を実施しています。(評価基準:総資産当期純利益率、売上高経常利益率、自己資本比率、当座比率、長期適合率、総資産回転率)
・人権デュー・ディリジェンス
2021年度から2022年度にかけてアジア地域における調達パートナーにアンケートを実施し、改善要求を実施してきました。続いて2023年度は国内のパートナーにおいてもアンケートと改善要求を実施しました。2024年度は国内調達パートナーをさらに拡大しアンケートと改善対策を実施していく予定です。
※調達パートナー:日立建機では調達先を「対等な立場で一緒にビジネスをつくり上げるパートナー」に位置づけており、通常は「調達パートナー」と表現しています。本文中においては、社外の方における検索性を鑑み、「調達パートナー」と表記しています。