Solution Linkage 通信簿 - 【Solution Linkage Point Cloud編】 株式会社川平土木【沖縄県南城市】
【Solution Linkage Point Cloud編】
株式会社川平土木【沖縄県南城市】
日立建機のICT・IoTソリューション「Solution Linkage」を導入したことで現場はどう変わったか、経営にどんな影響を与えたか―。
お客さまの評価をレポートする。
取材・文/斎藤 睦 撮影/関根則夫
今回のポイント
発注者も初めてのICT工事に
将来を見据え前向きに取り組む
すべてを任せてしまうと
自社にノウハウが残らない
できるところから取り組んでいけば
必ずメリットも見えてくる
信頼できるパートナーとともに技術を磨き
より高度なICT施工への挑戦も視野に
那覇空港から車で40分ほど、10月というのに真夏のような日差しが照り付ける中、数台の建設機械がエンジン音を響かせている。沖縄本島南部の南城市で工事が進む南部東道路は、同市と那覇市東隣の南風原町を結ぶ全長7.4kmの自動車専用道路である。
南城市内に本社を構える川平土木が施工を担当するのは、既に部分開通している南城大城ICに隣接する工区。主に盛土・排水構造物・下層路盤までの工事で、ICT施工として発注された。
「当社が初めてICT施工を手掛けたのは6年ほど前。同じ南部東道路の別工区でしたが、県としても初めて発注するICTモデル工事ということもあって、受注には多少の不安もありました」と語るのは、川平土木代表取締役の稲福一氏。「今後ICT工事が増えるのは必然であり、それを受注していくためには実績の積み重ねが不可欠。当社では若手の技術者が新しい技術の習得に積極的に取り組んでいるので、安心して任せています」
代表取締役 稲福 一氏
建設業界で最も深刻な課題のひとつとなっているのが人財不足。現場の働き方改革にもつながるICT化に、当社も積極的に取り組んでいきます。
その技術者の一人、この工事の監理技術者である具志堅貴紀氏は、先の最初のICT工事も担当した、いわば川平土木のICT推進リーダーとも言える存在だ。「他社でもほとんどICT工事をやっていませんでしたし発注者にとっても初めてでしたから、計画書を作ろうにも手本になるものがない。何から何まで初めてで、イチから勉強しました」と当時を振り返る。
初めての技術、慣れない業務なら、専門の業者にその部分を任せるのも選択肢のひとつだ。「確かに“すべてお任せください”という業者もあり、任せれば楽でしょうね。でもそれではこちらに経験もノウハウも何も残らない。我々がICTをやる意味がないと思うんです」と具志堅氏。実際、具志堅氏は3次元設計データの作成も内製化できるようにした。
また、ICT施工のサポート役を選ぶ際も、そこがポイントだったという。「他社にも声をかけたんですが、そこは“私たちがすべてやってあげます”という感じでした。一方の日立建機は、全部やってくれるわけではないが苦手なところはいくらでも手伝う、そんな“一緒にやりましょう”というスタンスに共感しました」(具志堅氏)。
現場風景。中央に盛られた土はほかの工区の残土が仮置きされたもの。土質改良後に当地の盛土にも使われる。
ドローンは現場を上空から撮影するために以前より保有していたが、空中写真測量に活用するのはこの現場が初めて。悪天候でなければいつでも現場の現状把握ができるようになった。
手軽なクラウドサービス活用で 測量業務や出来形管理を省力化
当工事におけるICT活用は、ドローンを使った空中写真測量から始まり、そこから得られたデータによる3次元設計データの作成、ICT建設機械による盛土工、そして3次元出来形管理までと多岐にわたる。この工程を実現する上でカギとなったのが、点群データの作成をどうするか、だった。
ドローンはもともと現場の撮影用に保有していた。しかしドローンで撮影した大量の写真から点群データを生成するためには高性能のパソコンやソフトが必要で、そのための人財も確保しなければならない。それゆえ測量は外部に委託していたが、費用面はもちろん、工期にも影響を及ぼしかねない日程調整の難しさも課題となっていた。
そんな時に出合ったのが日立建機のSolution Linkage Point Cloudだった。
「まず、クラウドで処理してくれるので通常のパソコンが使え、しかも操作が簡単。これで、いつでも現場の状況が3次元で把握できます」(具志堅氏)。
現在は、測量だけでなく月次の発注者への出来高報告に活用するほか、協力業者への支払いの根拠となる作業量の把握にも使っている。こうして測量業務の内製化が可能になり費用を削減できただけでなく、ノウハウの蓄積でより高度なICT施工への挑戦も視野に入ってきた。
今後、ICT化がさらに進んでいくのは間違いない。そうした中で建設会社は、また技術者はどう取り組むべきか、展望と課題を具志堅氏に聞いた。
「最終形は自動化施工ですよね。でも当社のような規模の建設会社にとってはまだ道は遠い。例えば3次元設計データの作成などすべて自前でやるのは簡単なことではありません。それでも会社として、技術者としてできるところからやっていけば、業務の省力化や効率化など必ずどこかでICTのメリットが見えてくるはずです。パートナーの力を借りながらでも、まずは始めることが大事だと思います」
ドローンの操作からクラウドへのデータアップロード、3次元設計データの利活用まで、具志堅氏自身が行っている。
監理技術者 具志堅貴紀氏
普段の業務で使っていると、使い勝手の面で気になるところや細かい要望が出てくるものです。日立建機はどんな些細なことにでも耳を傾けて、それに対する改善案を持ってきてくれます。こちらがやりたいことに寄り添ってくれる、信頼できるパートナーです。